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オルメカ文化研究者の日誌
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日本に戻ったのは4月後半、メキシコに帰ってきたのは5月末、気がつけば8月後半...。ずいぶんと更新をさぼってしまったので、今回も少し長めの文章になってます。かなり、かいつまんで書いたつもりなのですが...。時間のない方は時間のある時にゆっくりと読んでいただければありがたいです...。

日本にいる間は、発掘現場で1作業員として働き、時間があれば友人と呑みに出かけるという日々を繰り返した。まあ、これは予定通りで、期待以上に多くの友人達に会うことが出来た。高校時代の友人達、大学の先生方、先輩、同期、後輩達、そして以前のアルバイト先での仲間達。皆さん、ホントに忙しい中、時間を作っていただきありがとうございました。また、幸いにも数年ぶりに日本考古学協会にも行くことができたし、更にラッキーなことに今回の会場近くは温泉街で、久々の温泉にもゆっくりとつかることができた。

温泉入り口

メキシコに戻ってからは、テオティワカンに若干残してあった荷物を整理し、そのまま荷造りをしてベラクルス州の現場へ!

今回の現場は僕が専門としているオルメカ文化研究では比較的有名なアロージョ・ペスケーロ(Arroyo Pesquero)遺跡。40年近く前に大量の仮面や石斧などのヒスイ製品が発見された場所です。遺跡は名前の通り小川(Arroyo)に面していて、周辺は完全なる湿地帯。今回の調査の目的は、40年前に発見されたヒスイ製品を残した人々の居住の跡を見つけ、オルメカ人達がどんな生活をしていたのかを探ることでした。
 
地図

参加者はメキシコ人3人、アメリカ人5人そして僕という9人の学生に調査団長であるアメリカ人とメキシコ人。さらに、現地の作業員さんが9人という体制でした。ボスの2人は現場の仕事以外にも色々な雑務があり、アメリカ人の5人はあまり調査の経験が無いということで、一番経験がある僕が現場をまとめるという役割りが与えられました。

調査メンバー(毎朝30分かけてこのボートで発掘現場へ)

結論から言うと、今回の調査は大ハズレ...。
調査範囲内からは殆ど遺物が出土しませんでした。最終的には、合計100カ所でボーリング調査を行い、6カ所で試掘坑を開けて発掘したのですが、唯一調査範囲内から見つかった遺物は、後に地主とモメてしまた場所でのボーリング調査で見つかった土器片1点、それから、最終日にメキシコ人の調査団長が川に潜って採集した土器片3点。ここまで、大ハズレした調査は日本でアルバイトしていた時の試掘以来です。

メキシコでは通常、調査の第一段階として遺跡や遺物の分布調査というものが行われます。これは、現地表面の観察から地上に残っているマウンド(遺構と呼ばれる昔の人が遺した建造物が埋まった丘のようなもの)や土器のかけらなどの考古遺物と呼ばれるものを探して、遺跡の位置を確認し、必要があればその遺跡の地図を作る調査です。今回の遺跡は、前回の調査期間中に分布調査が終了していて、現地表面にはマウンドが残っていなかったので、発掘する場所を決定するためのボーリング調査をする場所を探すための簡単な分布調査から始まりました。

しかし、いざ色々なところを歩き回ってみても、予定していた調査範囲内(およそ3X4km)では遺物が地表面で観察できない...。しかも、調査予定地のほとんどは湿地帯...っていうか、水浸し....。ある程度の水は予測していたものの、ここまでとは...。浅いところでもくるぶしまでは余裕で浸かってしまい、深いところはとても歩ける状態じゃない...。僕が経験した一番深いところは太ももが全て水に浸かってしまうくらいの深さです。作業員さんの一人は、胸の辺りまで水に浸かってしまいました....。結局、色々と歩き回った結果、ボーリング調査や発掘調査が可能な場所は、川沿いに残された帯状に若干地面が高くなり水に浸かっていない場所と小川の中にある小さな島(中州?)ぐらいでした。
  
 
湿地帯の中へ...って言うか、水の中へ...(草の見えるところは全て水浸し...)

というわけで、調査は40年前の発見現場の近くでボーリング調査をすることに。実際に、足を踏み入れてみるとそこは沢山の樹々に覆われていてまるでジャングル、そして至る所に盗掘の跡が残っていました。アメリカ人の学生さん達はこのようなボーリング調査の経験が無いということで、初めは2つのグループに分けメキシコ人で経験がある学生をそれぞれにつけて、だいたいの作業の流れを覚えてもらうことにしました。同時に、おおまかな地層の特徴を見るという目的もあり、可能なかぎり深い地層の土を採るようにしました。
 
最初の調査地点へ

周囲には沢山の盗掘坑があるくらいなので、何か見つかるだろうと予測して始めたのですが、いくら掘れども掘れどもボーリングで引き上げられる土の中には全く考古遺物が見つかりませんでした...。結局、直径10センチほどの穴の中に水が湧き始め、地層も砂の層に変わってしまいボーリングで引き上げることができなくなり、その場所でのボーリング調査は終了しました...。

盗掘坑の一つ

その後は、調査範囲内を色々と歩き回ったり、ボーリング調査が可能そうなところはボーリング調査を行い、なんとか発掘するべき場所をみつけようとしたのですが、結局は調査範囲内では考古遺物を見つけることができませんでした...。しかし、発掘に来ているのですから何処か発掘しないと。という訳で、ボーリング調査で比較的多く炭化物(昔の植物が炭のようになったのもで、人間の生活に関係する比較的可能性が高い)や焼けた粘土の塊が見つかった場所や、40年前のヒスイ製品の発見地点の近くにテストピットと呼ばれる試掘坑を開けることにしました。とりあえず、2x2メートルと1x1メートルの広さで2カ所の発掘を開始しました。
 
ボーリング調査風景

試掘坑での発掘風景

しかし、予想通りというか残念ながら、試掘坑からは1点の考古遺物も見つかりません。挙句の果てには、試掘坑内に水が湧いて来て通常の発掘のようにはいかなくなってきました。仕方が無いので大きい方の試掘坑も1x1メートルに縮小し、可能なかぎり下まで下げるということで作業を続けてもらいました。しかし、掘れども掘れども、出てくるのは泥と水ばかり。結局、何も見つからないまま。最終的には最初にも書いたように6カ所で試掘坑を開けたのですが、試掘坑からは考古遺物は何も見つかりませんでした。
  
水浸しの試掘坑...

そんな訳で、当初の予定では8月半ばまでの調査の予定だったのですが、考古遺物が見つからないことと、アメリカ人の学生さんが体調を崩して入院したということも重なり、7月後半に調査は終了になってしまいました。大急ぎで、宿泊所を片付け、アメリカ人の学生さんと団長さんの家族はアメリカに向けて出発し、僕らはベラクルス州の州都ハラパに向けて出発することになりました。今後は僕だけが整理作業のために雇ってもらえたので、僕はハラパに滞在して今回の調査の整理作業をすることになってます。発掘は大ハズレで殆ど出土遺物は無いのですが、1週間ほど周辺の遺跡の分布調査も行い、そこではある程度の量の考古遺物を採集することができたので、整理作業を必要とする考古遺物は段ボール箱5箱分くらいはあります。3人のメキシコ人の学生さん達は、それぞれ次の仕事を求めて2人は一ヶ月間の調査でパナマ共和国へ出発し、1人は9月から年末までメキシコの反対側にあるゲレロ州の海岸地帯で調査に行くことになってます。

整理作業については、また機会をあらためて報告していきますが、僕は元気にやってます。


おまけ(調査地点の裏で見つけたワニの巣...中には卵があるらしい)

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お疲れ様です
 どうも、お久しぶりです。イヤー、ほんとお疲れ様です。ま、たまにはスカの現場もありますよね。
 S並区の現場は旧石器祭りとなりました。ひたすら深掘りです。今週末で終わりですが、来週一週間だけI○Uの試掘を手伝い、カンボジアに行きます。
 お互い、がんばりましょう。
たばた 2008/08/18(Mon)18:43:55 編集
Re:お疲れ様です
たばたさん、コメントありがとうございます。
まあ、確かにたまにはスカの現場もありますよね。ただ、すごく楽しみにしていた現場なので、かなりガッカリです...。もちろん、調査団長は更にガッカリしてましたが。

そちらの現場は楽しそうですね、羨ましい...。次回日本に帰る時にはまた、皆で働けると良いんだけど...。もう、難しいかな。

相変わらず、忙しそうですが体調には気をつけてがんばってください。
僕も、早いとこD論を終わらせる事ができるようにがんばります!
【2008/08/19 09:00】
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